ちょっとだけ怖い話~〇体発見⁉~
これは僕が小学生の頃の話。
僕の家の近所には川が流れていた。
川といっても両岸をコンクリートで固められているどちらかというと用水路のような感じの川だった。
水はヘドロのようなものに覆われ、缶や瓶、洗剤などの容器ごみが散乱し、たまに自転車なんかの大きなモノまで捨てられていた。
子供ながらにちょっとひどいなと思っていた。
ある日友達の家に行こうとその川にかかっている橋を通った時、信じられないものが目に飛び込んできた。
それはなんと泥だらけの“手”だった。
水の中から「助けてくれ」と言わんばかりに、こちらに向けられていたのだ。
「大変だ」
僕は死体が川に捨てられているんだと、心臓がバクバクするのを感じながら、急いで家に戻り母親にこのことを伝えた。
母は僕の話が信じられなかったのか、確認するためその現場まで急いで走った。
そして、母も目の前の光景を見て取り乱しながらも、警察に電話するために家へ戻っていった。その頃は携帯なんかなかったからね。
しばらくすると、警察や騒ぎを聞きつけて集まってきた近所の人たちで辺りはいっぱいになった。
結論を言うとそれは人間の手ではなかった。
ただの“ゴム手袋”だった。
川に捨てられたゴム手袋の中に、ヘドロにより発生したガスがたまり、水面に浮かびあがって、まるで人間の手のように見えていただけだった。
ホッとすると同時にこれだけの騒ぎにしてしまったことに恥ずかしい、申し訳ないという気持ちでいたたまれなくなった。
そんな僕の気持ちを察してくれたのか年配のお巡りさんが
「まあ、こんなこともあるよ。事件じゃなくてよかったね」
と僕の肩に手を置きながら言ってくれたのが救いになった。
本当偶然にしてもこんなことがあるんだね。
でももしかしたら、あれはあまりにも人間たちが川を汚すんで、川が助けを求めていたのかもしれない。
そう思えるくらいひどかったからね。
その後は自治体のみんなの力できれいにするように努めて、今は当時とくらべたら、びっくりするくらいきれいになっている。